
インタラクティブ動画で顧客体験を最大化。
MILとイノベーションで描く、情報発信の新常識とは
法人向けIT製品の比較・資料請求サイト「ITトレンド」、ビジネス動画プラットフォーム「bizplay」などを展開する
株式会社イノベーションは、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「INNOVATION HAYATE V Capital(IHVC)」※を通じ、
スタートアップ企業へのハンズオン支援に取り組んでいます。
※ 投資顧問会社のハヤテインベストメント株式会社と共同設立
IHVCにとって7社目となる出資先は、インタラクティブ動画の市場をリードし、編集・配信と運用改善のプラットフォームを提供するMIL株式会社です。今回の出資は、BtoBビジネス関連の動画コンテンツ配信を出資側・調達側双方が手がけており、
具体的な協業を重視した資本業務提携の意味合いが従来以上に鮮明となっています。
インタラクティブ動画のポテンシャル、また協業で期待するシナジーについて、双方の責任者に聞きました。
MEMBER
今回の出席者

光岡 敦 氏
MIL株式会社 代表取締役CEO/Founder
以下「光岡」
2006年に株式会社ブランディングテクノロジー入社。Webディレクター・Webコンサルティングに従事し、その後2社の創業を経験。Webコンテンツがリッチ化していく流れと、データを活用した動画マーケティングのPDCAに必然性を感じ、インタラクティブ動画プラットフォームを開発。2018年3月にMIL株式会社を設立しエクイティファイナンスを実施。

榎本 陽介 氏
同社 取締役CFO 兼 CSO
以下「榎本」
有限責任あずさ監査法人にて国内外の金融機関・事業会社に対する会計監査、PEファンド買収案件の財務DD業務、中小企業再生支援協議会の事業再生業務に従事。その後、株式会社LITALICOで取締役直下の事業企画部マネジャーとして予算策定、予実管理、管理会計体制構築、中期経営計画・事業戦略策定支援などに従事。2020年11月にMIL株式会社入社。コーポレート部長等を経て、2024年5月より取締役就任。
公認会計士・税理士

曾根 康貴
株式会社イノベーション 執行役員 事業開発管掌兼CVC管掌 /
株式会社Innovation M&A Partners 取締役
以下「曾根」
2008年にソフトバンク株式会社の経営企画として中長期計画や月次決算を担う。またプロジェクト推進として事業撤退や事業立ち上げ、業務改善、アライアンス、ブランディング、会社設立など多くのプロジェクトマネジメントを実施。2020年からは合同会社DMM.comで経営支援や子会社経営を担う。2024年にイノベーション入社後、BizDevやコーポレート改善を担当し、2025年よりCVCも管掌領域に加わりBizDevやM&Aだけでなくスタートアップ投資・支援も推進。
双方向性で変革するデジタルコミュニケーション
─ まず、会社の事業とご自身についてお聞かせください。
光岡:視聴者が選択肢を選べる「インタラクティブ動画」の領域でいち早く2018年3月に設立した、MILの代表を務めています。これまで累計8万8,000件のインタラクティブ動画を配信しており、総再生回数は9,000万回超と国内トップクラスの実績を誇ります。
私は大学卒業後に入社した会社では Webディレクター・コンサルタントとして、サイトの制作運用とコンバージョン率向上のための分析に携わってきました。ユーザー行動に基づく改善で成果を挙げてきた中、新たにデジタルコンテンツの主役となった動画についても同様のアプローチで価値を創出できると考え、視聴データの取得・活用に適したインタラクティブ動画の制作プラットフォームとしてMILを立ち上げました。
直近では2025年8月にリブランディングを実施し、自社を「インタラクティブ体験」の提供者として再定義しました。創業以来培ってきたインタラクティブ動画の技術・ノウハウをもとに「体験とデータを成果に繋ぐ」という提供価値を明確化しています。
榎本:私は監査法人所属の公認会計士として法定監査や事業再生、PEファンドの買収時の財務調査などを担当後、東証プライム上場会社で事業企画部門のマネジャーを務めました。ここでは「数字と事業をつなげる」仕事、具体的には増収・コスト削減に向けた戦略策定や、事業部門トップとの調整、さらに現場の業務改善のサポートなどを経験しました。
当社には創業3年目にジョインしましたが、これは光岡の友人としてMILにシード投資していた事業会社社長である義兄から「CFOを探している」と打診されたのがきっかけでした。監査法人にいた頃から光岡とは面識があり、あらためて会って話したところ仕事上のフィーリングも合うと直感したので、以来チーム一丸となって 会社の成長を目指しています。
─ インタラクティブ体験とはどんなものか、少し解説いただけますか。
光岡:パンデミックを契機に社会のデジタル化が急速に進み、企業と顧客の接点は現在、オンラインが中心になりつつあります。同時に、顧客ニーズの多様化を受けてサービスが複雑化する中、企業が発信したい情報の総量は増加し続けています。
企業側が「伝えたい情報」は増えているにもかかわらず、テキスト・画像中心の従来型コミュニケーションでは、実際に顧客に「伝わる情報」が不十分。このギャップが、多くのシーンで深刻化している状況です。

そこで課題を解決するのがインタラクティブ体験、つまり、動画内の情報を自らタップ・クリックすることで視聴者が企業と双方向にコミュニケーションを取る、新たなデジタル体験です。
映像をただ眺めるのではなく、ご自身の興味に合わせて、知りたい情報へ瞬時にたどり着く。時間・場所を問わずそうした体験ができる環境を企業側から提供することで、顧客は自分に合ったペースで、より深い理解を得られるようになるのです。

この視聴者一人ひとりのアクションは、企業側にも大きな価値をもたらします。視聴者がインタラクティブ体験を通じて「何に興味を持ち」「どこで温度感が上がったか」といったインサイトは、詳細なデータとして取得・分析できるのでこのデータをもとに画一的なアプローチから脱却し、個々の顧客に最適化されたコミュニケーションや、それを実現する新たな業務プロセスが構築することが可能となります。


タイパ重視時代に、受け手・送り手の相互理解を図る
─ インタラクティブ体験は、例えばどんな用途に向いていますか。
光岡:分かりやすいのは、新卒採用候補となる学生への情報提供です。
20代以下の世代にとって、目に留まりやすく記憶に残りやすい動画からの情報収集は、ごく日常的な行動です。これは学業やインターン、アルバイトなどで多忙な中、すき間時間に観たいところだけ素早くチェックできる動画が、タイパ(時間対効果)重視の感性にフィットしていることも理由です。
ただ、多様な動画が次々に流れてくるSNSは玉石混交の内容で、YouTubeも目的の情報を探し出すまで、やや時間がかかります。そのため近頃は企業サイトの公式情報が見直されており、インタラクティブ体験は、ここで効果を発揮します。
日頃スマホに触れている経験から想像いただけるとおり、完全な受け身でなく、選択行動も交えて動画に接したとき、総視聴時間は大幅に延びる傾向にあります。会社説明動画にしても頭から最後まで1時間じっと観るのは大変ですが、タップで深掘りできるポイントをいくつも仕込んだ私たちのインタラクティブ体験では、2時間、3時間という視聴時間も珍しくありません。学生の理解は深まり、企業側も熱意ある候補者のサインが得られます。
榎本:インタラクティブ体験は、話題の生成AIにない優位性も持っています。
例えば、ChatGPTなどのAIチャットは非常に便利ですが、ビジネス活用には二つの大きな課題があります。一つはAIによる誤回答、いわゆる「ハルシネーション」のリスクで、もう一つは自然な形で提案をしたり、ある方向に会話を導いたりといった「働きかけ」をAIに任せるのが難しいことです。
この点でインタラクティブ体験は、すべて人間による監修のもとコンテンツを制作するので、意図しない情報を提示するリスクがなく、企業のブランドイメージを守りながら安心して導入いただけます。また体験設計のプロセスでは、視聴者に対する能動的な「働きかけ」の仕掛けを組み込める自由度も備えています。
もちろんやり過ぎは禁物ですが、“いい塩梅”、つまり「適切なトーンでの働きかけ」と「コンテンツの安全・安心」を両立させる設計も、私たちが得意としているところです。
「動画」の先にある「体験」を提供したい
─ 企業の採用活動に、インタラクティブ体験の積極活用を提案しているそうですね。
榎本:はい。採用活動における候補者体験を革新するソリューションとして「インタラクティブ採用」と名付けたサービスを提供しています。導入企業からは「年間500時間近い工数を削減できた」「内定承諾者数が昨年比で 4.7倍向上した」など、高い評価をいただいています。
─ 企業の採用活動に、インタラクティブ体験の積極活用を提案しているそうですね。
榎本:はい。採用活動における候補者体験を革新するソリューションとして「インタラクティブ採用」と名付けたサービスを提供しています。導入企業からは「年間500時間近い工数を削減できた」「内定承諾率が昨年比で 4.7倍向上した」など、高い評価をいただいています。
光岡:当社が提供するプラットフォームでは、会社説明会・社員座談会・FAQ(よくある質問)などのコンテンツやアンケートフォームが連動し、オンラインの採用活動に双方向的なユーザー体験を付与できます。
一人ひとりの関心・意向を視聴データからAIが推測し、また注目すべき指標も当社からお伝えしているので、それらを織り込むことで次の採用ステップとなる面談が充実し、ミスマッチを避けながら内定承諾率の向上を図れる仕組みになっています。

─ 企業の採用活動に、インタラクティブ体験の積極活用を提案しているそうですね。
榎本:はい。採用活動における候補者体験を革新するソリューションとして「インタラクティブ採用」と名付けたサービスを提供しています。導入企業からは「年間500時間近い工数を削減できた」「内定承諾者数が昨年比で 4.7倍向上した」など、高い評価をいただいています。
光岡:当社が提供するプラットフォームでは、会社説明会・社員座談会・FAQ(よくある質問)などのコンテンツやアンケートフォームが連動し、オンラインの採用活動に双方向的なユーザー体験を付与できます。
一人ひとりの関心・意向を視聴データからAIが推測し、また注目すべき指標も当社からお伝えしているので、それらを織り込むことで次の採用ステップとなる面談が充実し、ミスマッチを避けながら内定承諾率の向上を図れる仕組みになっています。

─ 採用以外の用途でもインタラクティブ体験は有効ですか。
光岡:もちろんです。現在マーケティング・営業・カスタマーサポートなど、企業のさまざまな部門で当社のプラットフォームを活用いただく機会が増え、大きな手応えを感じています。
私たちは高機能なツールの提供で終わらず、お客様各社・各部門の事業課題に深く寄り添い、成果が出るまで中長期的に伴走できるパートナーを目指しています。直近ではプラットフォーム導入から数カ月で「ぜひ来年も更新したい」との声をいただくなど、着実に成果も出てきました。
そうした中で1年前、BtoB事業者の豊富な顧客基盤をお持ちのイノベーションから、ビジネスパーソン向け動画メディア「bizplay」に関する協業のお誘いをいただきました。メディアの進化や、顧客基盤のさらなる強化をお手伝いできれば、当社にも大きなシナジーが見込めると考え、今回出資いただく運びとなりました。
榎本:bizplayのスポンサー様にとって「質の高いリード」、つまり視聴者にプロダクトを深く理解いただいた上で次の行動を促すことは、非常に重要なポイントです。
インタラクティブ体験を介することで、動画の視聴者は受け身の姿勢から、自ら課題解決の道筋を探る能動的な姿勢に変わります。この変化がもたらす「理解度の深化」こそ、複雑なB2B商材のスポンサー様の成果に直接貢献できる、私たちの提供価値だと考えています。
─ 出資側である曾根さんは、MILやインタラクティブ体験の強みをどう見ていますか。
曾根:私がCVC管掌に就いたのは、MILと当社の提携がほぼ決まった後のことですが、光岡さんや榎本さんとはランチもご一緒し、「情熱と戦略を併せ持つ、とても勢いのある会社」という印象を持っています。
これまで私自身、IPテレビや動画配信といったメディアに近い事業のほか、ヒューマノイドロボット事業やSNSマーケティング事業など、まさにインタラクティブなデジタルコミュニケーションに携わったこともあります。
そこでの経験も踏まえると、今後生成AIによって情報流通の経路が大きく変わるのは間違いありません。インタラクティブ性は、これからのメディアが持つべき「プラスアルファ」の強みになると考えています。
特にbizplayという動画メディアについて言うと、MILの協力を得てインタラクティブ性を持たせることは、技術的にはすぐにでも可能です。タイパ重視の若者というお話が先ほどありましたが、bizplayの視聴者も意識が高く、自身に役立つ学びを求める方々が多いです。学びたい内容に合わせてインタラクティブに、どんどん提示していく仕掛けがあれば、間違いなく有効だと思います。
具体的にどうインタラクティブ性を採り入れるか、今まさに検討中ですが、個人的には「メディアと学習コンテンツの中間」あたりに可能性がある気がしています。
商習慣の変容をリードする事業に
─ いよいよこれからが本番ですね。今後の協業について、最後に抱負をお聞かせください。
曾根:企業のデジタルコミュニケーションを一緒に変革していきたいというのが、まず大きな目標です。当社グループは「『働く』を変える」というミッションを掲げていますが、CVCとしても「商習慣の変容」に貢献したいと考えています。そのポテンシャルをお持ちなのがMILという会社で、私たちにとって“ど真ん中”のパートナーです。
特に意義深いのが、「なぜ業務をデジタル化するのか」というマインドの部分から変えていけることです。DX(デジタルトランスフォーメーション)で工数を減らし、業務効率化を図るだけの取り組みは、そろそろ限界に近づいています。だからこそ企業だけでなく、顧客にも価値あるデジタル化を目指し、インタラクティブ体験を通じてCX(カスタマーエクスペリエンス)を高めていけることに期待しています。
光岡:創業以来8年間、動画を通じて得られる「体験とデータ」にこだわり、知見を培ってきた当社は、DXだけでないCXを内包したIX(インタラクティブ体験)にたどり着きました。「良質な体験が良質なデータを生み、良質なアクションを可能にする」という信念が、一見競合する他社にないMIL独自の価値だと自負しています。

光岡:創業以来8年間、動画を通じて得られる「体験とデータ」にこだわり、知見を培ってきた当社は、DXだけでないCXを内包したIX(インタラクティブ体験)にたどり着きました。「良質な体験が良質なデータを生み、良質なアクションを可能にする」という信念が、一見競合する他社にないMIL独自の価値だと自負しています。
榎本:光岡が言うとおり、CXと連動したDXこそ、私たちが実現する価値そのものです。「DXで現場は楽になったけど成果は減った」という事態は、インタラクティブ体験を活用していれば確実に防げると思うので、「サービス向上と業務効率化を両立するソリューション」として、インタラクティブ体験のイメージを確立したいと思います。
曾根:リードを獲得・提供する事業を続けてきたイノベーションは、良質なリードの価値を深く理解しています。そこで目下進めているのが、送客と並行して自社サービスのリードも獲得し、トータルな知見と顧客基盤をさらに厚くする戦略です。
比較サイト、動画メディアのほか、当社グループにはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)やM&A仲介、またこのCVCのような新規領域があります。いずれもお客様の重大な意志決定に関わるサービスなので、対面で深くコミュニケーションする時間が大切になりますが、この貴重な時間を、例えば「今なぜ資産運用か」といった基本の説明に使うのは、正直もったいない。そこで予備知識を確実にインプットできるツールとしてインタラクティブ動画を活用していきたいですね。
光岡:銀行・カード・証券・保険などの金融系企業に、MILのインタラクティブ体験は既に多数導入いただいています。この領域でノウハウもあるので、お話を聞きながら、これから一緒に知見を増やしていくイメージがはっきり見えた気がします。
─ シナジーを目の当たりにする日も近そうです。興味深いお話をありがとうございました。
(聞き手・文:相馬大輔 写真:田村秀夫)
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