時代を見通し、足場を広げるリーガルテック。
出資者から見たGVA TECHの強みとは

法人向けIT製品の比較・資料請求 サイト「ITトレンド」の運営事業などを
展開する株式会社イノベーションは2023年6月、ゼネラルパートナーであるハヤテインベストメント株式会社と
共同設立したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)「INNOVATION HAYATE V Capital」を通じ、
リーガルテック関連のITサービス「GVA」シリーズを開発・提供するGVA TECH株式会社に出資しました。
今回の出資は、成長に挑む数々の企業を支援してきたハヤテグループ代表の杉原行洋氏が
「トップの人柄と時代認識、事業戦略」に信頼を寄せたことで実現に至ったといいます。
この間のいきさつや、今後目指すもの、また創業経営者同士で交流を持つ意義などについて、
GVA TECH・イノベーション双方のトップに聞きました。

 MEMBER

今回の出席者

山本 俊 氏

GVA TECH株式会社 代表取締役   /   GVA法律事務所 代表弁護士
以下「山本」

岡山大学法学部を卒業、山梨学院大学法科大学院を修了後、勤務弁護士を経て2012年、スタートアップや海外進出企業などへの顧問業務を主体とするGVA法律事務所を設立。同年設立された株式会社マネーフォワードなどの顧問弁護士として、企業成長や出口戦略に関わる法務サービスを幅広く提供する。並行して、2017年にGVA TECHを設立。法務管理、AI契約審査などリーガルテック関連のITサービス「GVA」シリーズ(「AI-CON」シリーズから2021年に改称)の開発・提供を通じ、「法律とすべての活動の垣根をなくす」未来に向けた挑戦を続けている。

富田 直人

株式会社イノベーション 代表取締役社長
以下「富田」

横浜国立大学工学部電気工学科を卒業後、リクルートで営業・マーケティング・広告サイトの立ち上げやマネジメントなどを担当。2000年に株式会社イノベーションを創業してB to Bマーケティング支援事業を展開。2016年に東証マザーズ(現グロース)に上場する。2022年4月、同社およびハヤテインベストメント株式会社の共同でCVCファンド「INNOVATION HAYATE V Capital」を設立し、起業時に掲げたビジョン「『働く』を変える」の実現に向けた関連分野のスタートアップ支援に注力している。

弁護士として危機感を抱いたテクノロジーで起業

─ まず、このたび資金調達した山本さんから、貴社の事業についてご紹介ください。

山本:GVA TECHは、“「法律」と「すべての活動」の垣根をなくす”をパーパスに掲げ、企業法務に関わる分野で複数サービスを開発提供している、従業員等70人強(業務委託を含む)のスタートアップです。
中堅企業や大企業の法務部門向けのSaaSソリューションとして、AIで法的リスクを検知して契約書レビューを支援する「GVA assist」を2020年2月から展開しています。また、法務部門が事業部からの問い合わせにメールやチャットで応じ、法務案件を一元管理できるクラウドサービス「GVA manage」を2023年1月にリリースしています。
さらに中小企業向けのITサービスとして、変更登記の書類作成の自動化、あるいは登記簿謄本の交付請求といった、法務局あてに行う手続きをカバーする「GVA法人登記」「GVA登記簿取得」なども提供しています。
法律関連でデジタルを活用するリーガルテックの市場は現在、2015年頃から登場した電子契約がコロナ禍の影響で急速に浸透した影響で活発化しています。具体的には、契約のオンライン化・ペーパーレス化でメリットを実感した企業から「前工程に遡ってデジタル化を進め、全体的な業務の流れやデータを整理したい」とのニーズが出てきており、この前工程のポジションで製品展開する僕らにも追い風になっています。

─ 山本さんはGVA TECHを2017年に設立する前から現在まで法律事務所の代表職にありますが、リーガルテックで起業したきっかけについてお聞かせください。

山本:もともと僕は、外部環境に適応した事業を行うことを意識しており、GVA TECHを設立したのも「法律を取り巻く環境の変化に対応しなければならず、テクノロジーの変化に対応しなければならない」と考えたのがきっかけでした。
それまで法律事務所の経営でも、少子高齢化という国内の環境に対応しなければと思い、若年人口の多い東南アジアへ進出する企業支援などに力を入れていましたが、トップ棋士に囲碁AIが勝利した2016年頃を境に「AIが弁護士の仕事を奪う」という未来予測が、にわかに現実味を帯びてきているように感じました。
そうした技術がもたらす変化に対応できそうな人が、当時の法曹界で見当たらなかったことに不安を感じた一方、「まだ誰も対応できないなら、弁護士業務や法務部門の工数をAIで減らすサービスを作って事業化できる」「売れるレベルのサービスにならなくても、自分たちの業務に役立てば無駄にはならない」という直感も働きました。
そこでほぼゼロからAIの勉強を始めて全国の大学・事業会社を訪ね、仮説をぶつけてはフィードバックをいただきました。思い描いたサービスを具現化する技術が少しずつ見えだし、ものにできるか半々の感触が得られたところで、起業の道に飛び込みました。

─ 相当な危機感だったのですね。

山本:「年代的に、自分はこの変化から逃げ切れない」という思いが強かったですね。
とはいえ危機感だけでなく、初めてのチャレンジは楽しくもありました。テックベンチャーの経営陣を支える法律事務所を経営してはいたものの、自らエンジニアと一緒にできることを考え、プロダクトを作り、従業員をまとめながら事業を伸ばすのは新鮮な体験でした。
弁護士業との掛け持ちから始め、ほどなく最初の出資を受けてからは、今のGVA TECHの事業に専念してきました。「もし法律事務所1本のままだったら今頃どうしていたか」などと想像することもありますが、数回の資金調達を経て、事業が軌道に乗ってきているのも、僕自身がこの事業に集中して時間をかけてきた結果だと思います。

「考え抜き、言語化するトップの姿勢が魅力」(富田)

─ 今回の出資に至る経緯や、決断した理由について、富田社長からお聞かせください。

富田:私たちのCVCは、“デジタル技術や革新的なビジネスモデルで世の中の『働く』を変えるスタートアップ”を応援するコンセプトのもと、4例目の出資先として山本さんの会社を選びました。過去3例と今回の出資が異なる点としては、CVC運営のパートナーであるハヤテグループの杉原行洋代表から、推薦を受けて検討を始めたことが挙げられます。
あらゆる企業にとって重要な法務の分野で、遅れていたデジタル活用を進めるGVA TECHの事業内容は、私たちの投資対象としては“ど真ん中”。山本さんを杉原代表にご紹介いただき「山本さんの会社なら世の中に新しい価値を生み出せる」と確信できたのが決め手となりました。

─ 杉原代表は中小企業の成長支援が専門で、年間数百社と接点を持っているそうですが、GVA TECHはその中から厳選されたということですね。

富田:ええ。杉原さんによれば、今回特にGVA TECHを推したのは、もともと法律分野で事務所を経営していた実績もさることながら、山本さんの「人柄」「時代認識」を買ったからだそうです。
杉原さんから見た山本さんは「どんな質問にも率直に答える信頼感」「飄々としているようで、考え抜いて物事を進める成熟ぶり」が印象的だった。事業家としては「技術とビジネスの趨勢・流れを読み取り、数年先まで仮説を立てている時代認識」を評価していると伺っています。
私も何度か山本さんとお話をする中で、杉原さんの所感に納得することができました。今では「リーダーが深く考え抜き、それを言語化して実践できること」「トップのご経歴も含めて安心感のある “大人ベンチャー”であること」が、GVA TECHの特長、強みだと思っています。
ビジネスの背後に潜む本質や課題、将来のことなどは当然私も考えますが、常に考え抜いているかと言われると自信がない。結局途中で考えるのをやめ、感覚的な好き嫌いで決めていることもある気がします。そうならない山本さんはすごいというのが、私の率直な感想です。

─ 山本さんご自身はどう思われますか。

山本:1日の中でもアイデアを考えるのに使う時間が長く、考え事が好きな性格なのだと思います。アイデアはすぐ枯渇するので、考えていて不足を感じたら、ヒントを求めて本を読んだりもします。

富田:アイデアが枯渇したとき、それを自覚できることは大事ですね。得てして経営者は、しっかり考えているつもりでも同じところを堂々巡りしていたりしますから(笑)。

「生成AIが大きく広げた可能性に挑む」(山本)

─ 山本さんはGVA TECHの事業を通じ、AIの能力を法律分野で生かす試みを続けてこられたと思います。創業から6年余を経た現在、AIの実用性や将来性をどう捉えていますか。

山本:今だから言えますが、僕はつい最近までAIに「ここまでのことしかできないのか」という物足りなさ、焦りを強く感じていました。
リーガルテックでAIが主に扱うのは文字情報ですが、僕らが最終的にAIに任せたいのは、契約書などを「正しく・漏れなく・効率的にまとめるための支援業務」です。ただ契約関連の文言は企業間で言い回しが異なり、絶対的な正解をAIに教え込めるとは限りません。
そのせいもあって従来のAI活用では、学習結果から類推してリスクがありそうな部分を指摘し、代案のリストを示すのが精一杯で、書き直すサポートまではできていませんでした。これでは、適切な内容に修正する前のチェックまでしかできず、「業務効率化の効果は3割程度で頭打ちだろう」と悲観していたのです。
そうした状況がこの1年で、ChatGPTをはじめとする生成AIの登場によって一変しました。指示に基づいて新規に文章を作るという、今までにないことが可能な生成AIは、当初から僕らが目指していたのと近いことを実現するための技術的基盤になりそうです。そのポテンシャルは非常に大きく、当社事業への貢献を楽しみにしています。

─ 生成AIには、“もっともらしい嘘”をつくので生成結果をそのまま使えないなどの課題もあります。実際に、どのような活用をお考えですか。

山本:生成AIは一般に「ユーザーが増えるとコストがかさむ」「生成に時間を要する」「事実と異なる内容が混ざる」という3点が、活用する上での課題とされています。
これらについて僕らは「用途を選べば、さほど問題にならない」と考えています。具体的には、例えば「過去の法務部門の回答履歴をもとに社内FAQを整備中だが、手間がかかり進んでいない」という企業では、まず生成AIでたたき台を作るのが効果的です。こうした用途では一定のコストや時間は許容できるので、生成されたテキストのチェック体制さえ整えれば、当社がサービスとして提供することも十分現実的だと考えています。
むしろ気をつけなければならないのは、AIで合法的にできるサービス内容が限られている点※ や、企業間で生じる用語の揺らぎへの対応です。
契約書の問題点をAIで自動修正するような“ど真ん中狙い”のサービスは当面難しいので、切り口を工夫し、できるところからチャレンジしたいと思います。また企業ごとの用語・表現の揺らぎに対しては、GVA TECHの各製品を継続利用いただくようご提案し、蓄積していく各社独自のデータで個別にAIを学習させて最適化を図りたいと考えています。

※ 事件性がある契約関係事務に関し、AIが法的観点から事情を整理して書面を生成・文言を修正したり、法的リスクの有無や程度を表示したりするサービスの有償での提供は、弁護士による精査・修正を交えて行うなどしなければ、非弁行為を禁じた弁護士法72条に反するおそれがあるとの見解を、法務省が今年8月に公表している

起業家がヒントを探り、上場後をイメージできる場を

─ GVA TECHの事業展開について、富田さんはどうご覧になっていますか。

富田:私は法律の世界に特別詳しくはないですが、杉原さんとも話したのは「事業を広げる山本さんの判断が的確」だということです。
最近リリースされた法務案件管理サービスであるGVA manageが効率化を支援するのは、既存のAI契約書レビューサービスであるGVA assistがカバーする工程のより川上の工程です。GVA manageのリリースにより、法務部門のほか事業推進部門とも接点ができ、GVA TECH社のユーザーのすそ野が広がったのです。大きく重点を移す「ピボット」までいかない、いわば「ずらし」の戦略が巧みだと思います。

山本:企業の法務部門が抱える業務のほとんどは、事業推進部門とのやりとりを伴います。この領域で課題解決に役立ちたいと考えてリリースしたのがGVA manageです。
GVA assistの提供を通じてユーザーから契約審査以外の課題をヒアリングした結果、法務案件管理領域のGVA manageを開発して価値提供の範囲を広げることを決断しました。実際やってみると、法務と事業部の双方を見ながら両者を橋渡しする役割は僕らに合っている気がしていて、このポジションに手応えを感じています。

富田:弊社の事業であるITトレンドに置き換えてみても、「IT製品を比較検討する前段階で課題を抱える層へのサポート」や「製品を導入後、十分活用できていない層へのアプローチ」など、ずらしの発想で事業を広げる余地は、いくらでも考えられると思います。
そうした発想も大切ですが、やはり肝心なのは実現できるかどうか。自社の成功体験を否定する面もありますから、社内から反発が起きるはずです。

山本:GVA manageの企画当初も、社内の反対はすごかったです。「今、取り組んでいるGVA assistの開発にリソースを集中すべき」と納得しませんでした。

富田:分かります。しっかりと説明を尽くして納得していただかないと、エンジニアが離職してしまうこともありますよね。

山本:はい。ですからGVA manageの開発着手当初から現在までエンジニアと僕で、毎日1時間ミーティングを開いてきました。これから開拓する分野に関するユーザーの生の声などを共有し、ニーズを理解してもらった結果、スムーズに開発が進むようになりました。

富田:トップの一存で押し切るハードマネジメントもありうるでしょうし、相手によっては、山本さんのような情報共有も有効でしょう。課題を解決するための然るべき手段を選び、事業を進めるのが経営者の手腕だと思います。
私の会社は、テレマーケティングや広告業から始まり、IT製品比較サイト(ITトレンド)にピボットして上場しました。一方山本さんは、法律の専門家からWebサービスの分野へ短期間で進出し、最新の技術にも詳しい。これからお互いに勉強し合う関係になれたらと思います。

山本:経営者の知り合い同士でも、赤裸々な話までは普通できません。今回出資いただいたのを機に、経営の先輩である富田さんからご自身の経験の深いところをシェアいただけるようになり、事業のアイデアを探るための貴重な機会を得た気がします。

富田:人の体験談を聞くと、そこから派生して違うことを思いついたり、今までとは違う見方に気付いたりするものです。経営者が新たなアイデアを探索するには1人では難しく、だからこそ経験をシェアすることに、代え難い意義があると思います。
ただ率直な体験談にはつい一方的にアドバイスしがちなので、そうならないコミュニケーションに慣れ、お互いリスペクトできる関係を保つことが肝心です。経営者同士、そうした関係を持てるコミュニティを、CVCを通じて広げたいというのが私の願いです。

─ GVA TECHにとって今回の資金調達は、上場を見据えた最終段階の位置づけになりそうだとも聞いています。最後に、今後の展望についてお聞かせください。

山本:冒頭ご紹介したサービスを事業の柱にするめどが立ったので、今後は再現性を持って事業拡大するフェーズだと考えています。今回いただいた出資も、そのための組織拡充やマーケティングに充てる計画です。
僕らのプロダクトになじみがない方々も多いため、マーケティング戦略としては、まずサービスの思想・コンセプトから、しっかり言葉で伝えていきたいと思います。Webマーケティングやセミナーを起点に興味を持っていただき、「社内で予算化した」というタイミングを逃さずに詳細をご案内する。この流れを確立し、一気にブーストをかけるつもりです。

富田:私たちのCVCからは、上場前後の事業成長に詳しい杉原さんにもご協力いただきながら、山本さんをご支援したいと思います。
手前味噌になりますが、私たちの展開するCVCの強みは、経営者同士が議論を交わせる点にあります。企業の成長にとって上場は通過点とはいえ、ステークホルダーが一気に増えるため、対処すべき課題と難易度が格段に増す節目でもあります。成功体験に安住せず、上を目指し続ける経営者は孤独ですが、お互いに切磋琢磨し励まし合うことはできます。私自身、これからも自社の成長を目指しますし、困難から逃げずに頑張る山本さんを1人の人間として応援し続けたいと思います。
私はIPOの経験を主観的に共有することができますし、杉原さんはIPOを膨大な事例を通じて客観的に理解しておられます。ですから例えば、IRとしての対外的説明が増える上場後の世界に慣れるため、機関投資家などを想定した問答を繰り返して会社の姿勢・輪郭を明確化したり、自社の特色を市場に打ち出す効果的なポイントを探ったりするご支援もできると思います。

山本:INNOVATION HAYATE V Capital様の立ち位置は、非常にユニークだと思います。上を目指す経営者同士で気付かされ・気付かせるフラットな関係がそこにはあり、毎回お話をする度に学ぶものがあります。この輪が広がれば嬉しく思います。

─ 事業成長の糸口を絶えず探る、起業家精神の一端がうかがえるようなお話でした。今回はお忙しいところ、ありがとうございました。

(聞き手・文:相馬大輔 写真:田村秀夫)

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