「働く」を変えるスキルシェアで、
IT業界に新たな成長機会を創り出す。
GIGとイノベーションが提携の先に見るビジョンとは
法人向けIT製品の比較・資料請求 サイト「ITトレンド」の運営事業などを展開する株式会社イノベーションは2022年6月、
投資顧問会社であるハヤテインベストメント株式会社と共同設立したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
「INNOVATION HAYATE V Capital」を通じ、Web制作事業やサービス開発などを手がける株式会社GIGに出資。
同社との間で、資本業務提携を締結しました。
出資元と出資先がともに、 日本国内のIT業界の発展を目指して ビジネスやワークスタイルを変革する事業に携わる共通点、
さらに創業経営者同士が起業にかける思いに共感したことから実現したという今回の提携。
その狙いと意気込みについて、両社のトップに聞きました。
MEMBER
今回の出席者
岩上 貴洋氏
株式会社GIG 代表取締役
以下「岩上」
学生時代から、モバイルマーケティング、ITベンチャー企業数社での事業推進や、アーリーステージを対象とした独立系投資会社で投資業務やコンサルティング業務に従事。2007年に創業した株式会社LIGでは代表取締役として、システム開発、デザイン制作、コンテンツマーケティング、シェアオフィスなどの事業を展開する。2017年3月に同社を退き、同4月に株式会社GIGを創業。システム開発、Webマーケティング事業のほか、ITプロフェッショナルのマッチングサービス「Workship」、リード獲得に特化したCMS「LeadGrid」を提供している。
富田 直人
株式会社イノベーション 代表取締役社長
以下「富田」
横浜国立大学工学部電気工学科を卒業後、リクルートで営業・マーケティング・広告サイトの立ち上げやマネジメントなどを担当。2000年に株式会社イノベーションを創業してB to Bマーケティング支援事業を展開。2016年に東証マザーズ(現グロース)に上場する。2022年4月、同社およびハヤテインベストメント株式会社の共同でCVCファンド「INNOVATION HAYATE V Capital」を設立し、起業時に掲げたビジョン「『働く』を変える」の実現に向けた関連分野のスタートアップ支援に注力している。
デジタル人材不足に、マッチングで応える
─ まず、このたび資金調達したGIGの岩上さんから、
ご自身と会社について簡単にご紹介ください。
岩上:前職では、2007年にWeb関連のクリエイティブなどの会社を友人3人で創業し、社員が100人規模になるまで約10年にわたって経営に携わりました。その後、創業メンバー間の方向性の違いを受けて、現在の会社であるGIGを2017年に設立しました。
6期目を迎えたGIGは、再び100人規模まで育ち、その半数をクリエイター・エンジニアが占めています。事業の柱は大きく2つあり、1つはDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティング、具体的には大手企業のWebサイトやアプリの設計・システム開発・Webマーケティングなどのお手伝いをしています。
もう1つ、いま注力しているのが、フリーランスや複業などで働くデジタルスキルの持ち主をプロジェクトとマッチングするスキルシェアサービスの「Workship(ワークシップ)」です。機械学習などを用いた開発力と、DXプロジェクトを多数マネジメントしてきた私たちの強みを生かしたWorkshipでは、登録者のスキルや適性を的確に評価し、さらに「週5は難しくても2,3日なら」といった複業の事情も整理した上で、具体的なプロジェクトを進めるチームメンバーとしてアサインしています。よりストレスの少ないマッチングを目指してきた結果、直近では約4万人の方々に登録いただいています。
─ 上場を含め、起業のさまざまな“出口戦略”が視野に入ってくるシリーズBラウンドとして今回、合計2億円を6社から調達されたとのことですが、その1社であるイノベーションとの接点はどのようなものでしたか。
岩上:起業家の大先輩にあたるイノベーションの富田社長とは、実は以前からSNSでつながりがありました。いずれ採用などで思い切った挑戦をする準備として資金調達を検討していた今年の初め、富田社長のCVC立ち上げについての投稿を見つけてご連絡したのが、直接のきっかけです。
このたび当社に出資いただいた計6社は、全て事業会社です。前回のシリーズAでVC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けた際も、対応いただいたのは事業会社出身の方でした。これは、対投資家のプレゼンテーションを重ねる中で、「投資案件としてだけでなく、事業への姿勢を事業者視点から判断いただけるほうが納得できる」と感じたこと、また私自身、これまで組織に属して働いた経験がないので、組織を率いる方々から学ぶ機会をできるだけ多く持ちたいのが理由です。
特に今回、富田社長とお話しした中では、「私たちの事業の狙い・コンセプトを深く理解いただけている」という安心感がありました。上場後も一貫して成長を目指されている姿勢など、これから私が経営者として学ぶべき点も多いと感じ、ぜひ提携をとお願いしました。
類いまれな連続起業家の力量に期待
─ 会社の成長機会である資金調達を、経営者としてのご自身の成長機会としても重視しているのですね。出資側の富田社長からも、今回提携を決めた理由についてうかがえますか。
富田:「事業」「経営者」という、大きく2つの観点から出資を決めました。
まず事業については、副業・フリーランスを対象とするWorkshipのサービスが、「『働く』を変える」というイノベーショングループ全体で掲げるミッション、また「成長機会を創り出し、人と組織の可能性を最大化する」というイノベーション単体のミッションに一致すると考えました。
IT人材不足と言われて久しく、さらにコロナ禍以降、ワークスタイルの変化が加速した中で、IT製品の比較サイトを運営する私たちは、フルタイムに限られない多様な働き手の活用が顧客企業の成長に貢献する大きなポイントと考えていました。 当社にとってHRは専門外の分野でしたが、「こういうサービスがあればいいな」というイメージを、そのまま体現していたのがWorkshipでした。
また経営者については、岩上さんのキャリアや会社の業績を拝見し、事業をゼロから2回も成功させた実績、やりきる力の高さに惚れました。同じ30代だった頃を振り返ると、当時の私と比べるレベルにないほど圧倒的に優秀だと感じました。
─ 魅力あるビジネスを仕掛ける連続起業家として評価された岩上さんですが、ちなみにゼロからの再スタートに至った「方向性の違い」とは、どんなものだったのですか。
岩上:前の会社は創業メンバーの実家のビジネスもグループ化し、Web関連のほか、リゾート地で飲食店やシェアハウスも手がけるなど、楽しく働ける会社として事業運営をしていました。一方、同年代の起業家が次々に会社を上場させていくのを見ていた私は、「自分も経営者としてもっと成長し、世の中に大きく貢献できることをしたい」という思いを募らせていました。
会社として進みたい方向性が、株式を持つ創業メンバー間で分かれたので、「それなら私1人で出ていこう」と決めました。
─ MONO Investmentのお二人は、
どういった接点で富田さんと知り合ったのですか。
中西:投資信託などの金融商品が緻密な分析に基づいて設計されているのに対し、そうした商品を最終的に購入いただく個人投資家の方々への提案は従来、かなりアバウトなもので、投資対象を検討する分析サービスの提供も不十分でした。
そのギャップがあまりにも大きすぎるというのが私の問題意識で、われわれの知見を生かしたツールの提供を通じ、個人投資家の方々によりよい運用提案ができる環境をつくりたいと考えています。
─ 大きな決断でしたね。
岩上:GIGでは従業員の採用も取引先の開拓もゼロからやり直し、さらに新たな柱としてスキルシェアのWorkship事業を始めました。
「優秀なエンジニアやクリエイター、マーケターを採用・育成し、力を発揮してもらうのはWeb専門の会社にとっても容易でない」という実体験を踏まえ、DXプロジェクトを進める企業とデジタル人材とのマッチングには、大きな需要が必ずあると確信していました。
富田:日本の会社経営者に占める起業家の割合は、増加傾向にあるもののまだわずかで、その中でも複数回会社を立ち上げて軌道に乗せられた岩上さんのような連続起業家となると、本当に類いまれな存在だと思います。
一度の成功に安住せず、ゼロからもう一度リスクを取れる貪欲な姿勢を、まず私個人の心情として応援したかった。しかも経営者としての岩上さんの力量が実績として明らかなので、会社同士としても提携できると判断しました。
常に協業検討できる関係のありがたさ(岩上)
我が道を行く起業家同士の経験シェアが大切(富田)
─ そうした資本業務提携における、実際の取り組みについてもうかがえますか。
富田:われわれ双方のコラボレーションを通じ、IT業界の人手不足という課題の解決に必ず貢献できると考えていますが、製品比較サイトはマーケティング部門、HRサービスは人事部門を顧客とする違いもあります。そこで事業面では、今すぐ動き出すというよりも、さまざまな角度から、最も効果的な協業のあり方を探っていくつもりです。
上場準備も見据えたシリーズBというタイミングでの出資となりましたが、イノベーションは純投資目的のVCではありません。ですから今後もしGIGが上場に至っても、そこで投資回収して終わりではなく、もっと長期視点で継続的に応援したいのが本音です。さらに純投資として見ても、持続的成長をもたらす経営者のマインドセットに働きかけるほうが、上場という節目にこだわるよりもレバレッジが効くと思います。
起業家は常に自信を持って我が道を行き、選んだ道で成功しなくてはなりません。ですから私自身を含め、周囲からのアドバイスをそのまま実行するような人はいません(笑)。とはいえ上場準備から上場前後のフェーズには、これまで多くの人が陥ってきた “落とし穴”が存在しているのも確かです。そこで成長意欲の高い起業家同士、経験をシェアできる関係を持つのがとても有効で、大切なことだと思います。
佐々木:僕もやはり、起業家の立場になって応援してくれるトップと直接やりとりできたのが、今回提携に至った最大の理由だと思います。
僕たちはやりたいことがあって起業しているので、出資いただく場合も、「出していただいたから、こういうことをします」という取り組みではなく、「われわれが成長した中から、これだけお返しします」というリターンをお約束する関係でありたいと考えていました。
ただ、ベンチャーキャピタルもCVCも、担当者の多くは組織の一員です。特にCVCには自社の研究開発の一環という性格が強いところもあり、ベンチャーの技術を自社に取り込むことに関心がある、あるいは担当者のKPIが共同事業の実施件数になっていて、とにかく一緒に何かしなければならないといった例もみられます。
ですから、立ち上げた会社を自分たちのやり方で成長させたい起業家にとって、それが可能な出資者かどうかはよく考えなければならないところです。今回、富田社長と直接お話ししながら進められたのは幸いでした。
岩上:富田社長とのお話では、現時点での私の考えや立場を理解いただける安心感とともに、「なぜやるのか」という核心部分が問われる緊張感もありました。
資本業務提携にあたっては、ただちに何か形にしなくても、さまざまなアイデアを否定せず、常にあらゆるコラボレーションの可能性を検討できる双方向の関係を持てたのがありがたいと感じています。さらに今後、社会課題の解決につながるDX支援というGIGの戦略を組織や事業に落とし込んでいく中では、上場企業として市場と対話しながら、さらなる成長を目指されている富田社長を間近に見て学びたいと考えています。
トップの成長意欲を刺激し合える場でありたい
─ 投資を通じた会社同士のつながりが、新たな展開を探るトップ同士のつながりでもあることがよく分かりました。最後に、出資先となった事業と、出資元であるCVCの今後の展開についてもお聞かせください。
岩上:IT分野で働き手とプロジェクトをマッチさせるHRサービスとしては既に、細かいタスクの作業者を大量に確保できるクラウドソーシングや、週5のフルコミットを前提とする紹介・派遣が定着しています。しかし、それらの谷間に残された領域も十分大きいと考えています。
つまり、「人並み以上のデジタルスキルを持っていてもフルコミットの仕事は受けられないパラレルワーカー」という、活用されていないリソースを集めてプロジェクトを進める仕組みが確立できれば、今後さらに深刻化するエンジニア不足を解消できるはずです。Workshipを、そのためのベストのソリューションとして育てたいと考えています。
富田:「周囲にどんな人がいるか」という環境は、我が道を行く起業家に対しても多大な影響を及ぼします。
ただでさえ貴重な起業家マインドの持ち主が、もしそれなりの成功で満足し、「このくらいでいいか」と挑戦をやめてしまうとすれば、社会的な損失だと思います。ですから私たちのCVCでは、起業家同士が経験をシェアできるコミュニティを広げることで、「いいな、うらやましい」「自分もまだまだ挑戦しないとヤバい」といった、成長意欲を刺激し合える環境をつくりたいと考えています。
数あるCVCの“ワンオブゼム”では存在価値がないので、イノベーションという企業の持ち味や、私自身の個性・考え方を、これからしっかりと打ち出していきたい。「私と岩上さんで、こういうコミュニケーションを重ねたらうまくいきました」という経験をシェアするためにも、岩上社長が大いに成功してくれることを願っています。
─ さまざまな期待が膨らみます。今回は興味深いお話をありがとうございました。
(聞き手・文:相馬大輔 写真:小笠原慧 取材協力:株式会社ディ・ポップスグループ)
ENDORSEMENT
INNOVATION HAYATE V CapitalとともにGIGに出資した、
株式会社ディ・ポップスグループ(以下「D-POPSグループ」)後藤CEOからのコメント
岩上社長と私は、学生時代に弊社でインターンをしてくれた時からのお付き合いです。岩上社長の兄的な立場・富田社長の弟的な立場で、以前からお二人をよく知る私としては、今回イノベーション(INNOVATION HAYATE V Capital )とGIGの資本業務提携が決まったことを、大変嬉しく思っています。
「ITトレンド」という強力なプラットフォームを持つイノベーションとGIGの提携が大きなシナジーを生み出し、両社の成長に大きく寄与することを確信しています。また同時にD-POPSグループとしても、岩上社長が掲げる「テクノロジーとクリエイティブで、セカイをより良くする」というミッションに共感し、今回出資させていただきました。
学生時代からたゆまぬ努力を続け、決してあきらめないアントレプレナーシップを持つ岩上社長には、未来の成長と飛躍を心から期待したいと思います。
後藤 和寛氏
株式会社ディ・ポップスグループ 代表取締役 CEO
1998年、株式会社ディ・ポップスを設立。モバイルマーケティング事業を中心に、多角的な事業展開を進め、現在は、D-POPSグループの下、事業会社13社を経営。中期経営計画・グループ売上高500億、長期経営計画・グループ売上高1000億円を目指し、事業の拡大に邁進中。
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